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ビッグファイブは地球の足跡

主幹研究員 加藤竹彦

 ビッグファイブには様々な意味がある。例えば心理学の分野では、人間の性格を構成する「特性5因子」(神経症傾向・外向性・解放性・協調性・誠実性)を指す。サファリツアーのビッグファイブというと、見かけると嬉しい大型動物(バッファロー、象、ライオン、ヒョウ、サイ)になる。はたまた、ディズニーのビッグファイブ(ミッキー、ミニー、ドナルド、プルート、グーフィー)というのもある。ここで取り上げるのは、顕生代に地球上で起きた、生物が大量に絶滅した、特に規模の大きな5回の出来事(大量絶滅)のことである。

 そもそも地質時代の「代」や「紀」の区分は、化石として発見される動物相の相違によるものである。原生代・古生代・中生代・新生代の「代」の時代区分は、大量絶滅により従来の動物の多くが絶滅し、新たな動物が発生したことによる区分である。顕生代とは、およそ5億4200万年前から今日までの「肉眼で見える生物が生息している時代」のことで、三葉虫などの生物化石が多数産出し始めるカンブリア紀以後を指す。

 5回の大量絶滅を古い順に示すと、
① 4億4400万年前のオルドビス紀末に起きた大量絶滅(O-S境界)。当時生息していた全ての生物種の85%が絶滅
② 3億7400万年前のデボン紀後期に起きた大量絶滅(F-F境界)。全ての生物種の82%が絶滅
③ 2億5100万年前のペルム紀末に起きた大量絶滅(P-T境界)。海生生物のうち最大96%、全ての生物種で見ても90%から95%が絶滅
④ 1億9960万年前の三畳紀末に起きた大量絶滅(T-J境界)。全ての生物種の76%が絶滅
⑤ 6550万年前の白亜紀末に起きた大量絶滅(K-Pg境界)。恐竜のほぼ全てを含む全ての生物種の70%が絶滅

ということだそうだ。毎回、凄まじい数の生き物が死に絶え、次の時期までに新たな種が次々と生まれている。

 絶滅の原因には諸説ある。①では大陸が南極域にあり、氷床の発達に伴う海水準の低下によるとする説や、超新星爆発によるガンマ線バーストを受けたことによるとする説、②では寒冷化と海洋無酸素事変の発生によるとする説、③や④では火山噴火や大規模な海洋無酸素事変によるとする説、⑤では巨大隕石説などがあるが、解明されるには至っていない。

 大量絶滅を説明するためのユニークな学説もある。1984年、シカゴ大学の古生物学者のデビッド・ラウプとジャック・セプコスキーは、過去2億5000万年の周期的な大量絶滅を時系列分析によって説明付けたとする論文を発表した。彼らは海生脊椎動物、無脊椎動物、原生動物の科の絶滅の激しさに着目し、過去に12度の大量絶滅があったと結論づけた。大量絶滅間の平均的な長さは約2600万年と推定され、この周期性には地球外の何らかが起因しているのではないかと主張した。この周期性を説明する仮説として、太陽には未発見の伴星(ネメシス)があり、この星が周期的にオールトの雲(太陽系を球殻状に取巻いていると考えられる天体群、その存在はまだ確認されていない)を乱して莫大な数の彗星を発生させ、地球への衝突につながったとするネメシス説があり、二つの研究グループがネイチャーに投稿した。もしネメシスが実在するとしたら、現在行われている宇宙探査によって見つかる可能性がある。

 そして現在も大量絶滅が起きている、とみる生物学者は多い。例えば、ハーバード大学のE.O.ウィルソンは、人類が引き起こしている生物圏の破壊によって、これから100年間の間に、地球上の半分の種が絶滅するのではないかと予想している。人類とは、地球にとって罪深き存在なのかもしれない。

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