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ハトの目はなぜ赤い

 駅や街中でよく見かけるドバトは1500年ほど前に日本に渡来した外来種で、かつそれは世界各地で家禽化された飼養品種であったため、野鳥とは言わないそうだ。また鳩という漢字は鳴き声(クルッククゥー)からきているという説もある。

 ハトの目は赤いので、よく見ると薄気味悪い、という印象がある。赤い目をしたハトは「柿目」といわれる。実際はハトには柿目以外にも、銀目、金目、ブドウ目があるそうだ。瞳の周りにはアイサインという白い部分もある。意外にもハトは20色を識別できて、あらゆる動物の中でも識別能力に優れているのだ。

 人とハトの付き合いは古く、おおよそ1万年から6千年ほど前の新石器時代に飼育動物化されたと考えられている。エジプトやイランには今でもピジョンタワーが数多く存在するが、エジプトは食用が目的である一方、イランは肥料にするための糞の収集が目的である。

 ハトは平和の象徴として知られるが、その由来は旧約聖書のノアの方舟伝説から来ているのをご存じの方も多いかもしれない。ノアは47日目にまずカラスを放ったが、まだ水が乾く前であったからすぐに戻ってきた。次にハトを放ったところ、オリーブの葉をくわえて戻ってきた。これによりノアは水が引き始めたことを知ったという。

 通信手段としての伝書鳩は有名だが、ハトのレースは現代でも根強い人気を誇っている。レース鳩はドバトと比べて、骨格や脚などが強健で見るからに精悍である。それは長年の品種改良により帰巣本能や飛翔能力が向上しているからで、血統書付きの鳩は120万円もするという。中国の富裕層のマニア間では1羽が数千万円で取引されることもあり、台湾では誘拐され身代金を要求された事件も起きたほどだ。ちなみにハトの帰巣本能の理由には太陽の位置から巣の方向を知る説や、地磁気をとらえて巣の方向を知る説などあるが未解明である。

 通常、鳥は昆虫などを捕まえてヒナに与えるが、ハトのヒナは、親鳥の素嚢(そのう)という器官から分泌される高タンパクなミルクで育てられる。これは「ピジョンミルク」と呼ばれており、栄養価が非常に高く、アスリート用のプロテインに近い成分組成である。

 かつて北アメリカ大陸東岸にいたリョコウバトの話も耳にされたことがあるかもしれない。鳥類史上最も多くの数が棲息していたと言われ、その数50億羽と推定されている。リョコウバトの肉は非常に美味であったため、多くの人々により乱獲され、激減した。かつての個体数とは裏腹に繁殖力の弱い鳥であり、小さな集団では繁殖できず、繁殖期は年に1度で、しかも1回の産卵数は1個だけであった。このため1906年にハンターによって最後の野生個種が撃ち落され、さらにはシンシナティ動物園で飼育されていた最後の1羽マーサが1914年9月1日午後1時、老衰のため死亡、リョコウバトが絶滅した瞬間であった。ハトの目が赤いのは悲しみの色なのかもしれない。

主幹研究員 加藤竹彦

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