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ワカメの誤解

主幹研究員 加藤 竹彦

日本の食卓でおなじみのワカメ。健康食品やダイエット食品としても最近注目を浴びている。
 
日本人は古くからワカメを食していた。縄文時代の遺跡からワカメを含む海藻の植物遺存が見つかっている。万葉集には「比多(ひた)潟(がた)の 磯のわかめの 立ち乱(みだ)え 我(わ)をか待つなも 昨夜(きそ)も今夜(こよひ)も」のほか、海藻を詠み込んだ歌が百首近くも残されている。ちなみにこの歌の意味は「比多潟の磯のワカメのように、思い乱れて私を待っているのだろうか。昨夜も今夜も」と、何とも艶っぽい。
 
ワカメには食物繊維、ビタミン、ヨウ素をはじめ、カルシウム・カリウム・亜鉛などの海洋ミネラル成分が豊富に含まれている。その割に100gにつき117kcalと低カロリーなため、ダイエット食に適している。また、根本の所にあるひだひだの部分を「メカブ」と呼び、アルギン酸(ぬめりの成分)やフコイダンといった貴重な栄養素を多量に含んでいる。
 
さて、このようにワカメが現代人にとっての究極の食べ物であるにもかかわらず、実はワカメを食べる習慣を持つ国は世界に日本と韓国、北朝鮮しかない。また韓国の消費量は日本の3倍といわれている。韓国はワカメの圧倒的な消費国なのである。
韓国では、お祝い事には必ず「ミヨックク」とよばれるワカメスープを食べる習慣があり、日本の赤飯の意味合いに近い。特に女性の妊娠や出産には欠かせないものである。一方、ワカメがつるっとしていることから、試験に落ちる(滑る)という悪い意味もあるようで、そこから、韓国では大事な日の前日にはワカメスープを口にしないそうだ。
 
日本でワカメを沢山食べるようになったのはここ最近である。消費量はこの40年で4倍に伸びている。その理由は養殖ワカメの普及と加工技術の向上にある。
日本で流通しているワカメの97%は養殖ものである。その8割以上が韓国産か中国産で、特に中国産は74%を占める。養殖によって安定的な供給体制が実現した。
天然ワカメはもともと、生のまま天日に干す「素干し」や、灰をまぶして天日に干す「灰干し」などで流通していたが、乾燥が不十分だとカビが生えたり、変色もしやすく、また戻して食べるのにも手間がかかった。
このため、さっと湯通しして大量の塩をまぶす「湯通し塩蔵わかめ」が開発され、さらにその塩分を抜いて、カットしカール状に乾かした「乾燥カットわかめ」が登場、インスタント味噌汁やスープの具材、ラーメンなどの加工食品に用途が一気に広がった。
こうしてワカメ食品が大量に普及、今では中国市場にも出回り始めている。
 
ただ一方で、ワカメは深刻な問題を引き起こしている。ワカメは世界の侵略的外来種ワースト100のひとつにあげられている。また国際海事機関により、環境に顕著な影響を及ぼす水生生物10種のひとつとしても選ばれている。ニュージーランドでは、ロブスターの養殖場の網を埋め尽くすほど繁殖し、ロブスターが大量に死んだ事件が起きた。これを機にニュージーランドでは、ワカメを見つけたら行政機関に報告するよう呼びかけがされているほどである。
 
もはやワカメが到達していないのはアフリカ大陸と南極大陸しか残っていないという。この深刻な被害をもたらしたのは日本産ワカメ。なぜ世界各地に繁殖したのかというと、1980年代後半から日本の商船のバラスト水(船の重しとして使用される水)にワカメの遊走子が含まれた海水を使い、荷物を載せるときにバラスト水とともに放出されたためと言われている。
 
この際、世界中の人が食べられるよう、レシピやサプリを考えるしかないか。

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