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血液型あれこれ

主幹研究員 加藤竹彦

 犯行現場に残された吸殻を手掛かりに犯人が割りだされて事件は解決、という話を聞いたことがあるかと思う。吸殻に付着した唾液から血液型を特定するのだが、実際には唾液ではABO式血液型を鑑定できない人が約2割いる。ルウィス式血液型で「非分泌型」といわれるタイプの人は毛髪、皮膚、爪、脳、神経系、内臓、唾液、体液などに血液型物質を分泌しないか、していてもごく微量のため検出されないからである。

 血液型とは、血液内にある血球の抗原(血液型物質)の違いをもとに決めた分類である。抗原は赤血球・血小板・白血球・血漿などに多数存在し、2010年時点で327種類が認定されている。また、血液型の分類方法は300種類ほどが発見されている。

 ABO式血液型分類では、型違いの血液を混ぜると凝集(血が固まる)が起きる。これは、赤血球の表面にある糖鎖の違いが抗原となり、血漿中にある抗体と反応するからである。ただし、生まれたばかりの新生児は抗体を持たず、生後3か月くらいから腸内細菌によって産生されるという。

 Rh式血液型もよく知られるが、人の赤血球にアカゲザル(Rhesus)と共通の血液型抗原(糖鎖ではなくタンパク質)があることがわかり、この抗原中に含まれる「D」という抗原の有無によって区別する。Rh−型の人にRh+型の血液を輸血するとショックを起こす可能性がある。Rh−型の女性がRh+型の胎児を妊娠することが2回以上になると病気・流産の原因となることがある。日本人の99.5%はRh+とのこと。ちなみにRh式は意外にも、もっとも複雑な血液型であり、抗原が52種類も報告されている。

 2種類の赤血球が混在する突然変異によって複数の血液型(例えばA型でもAB型でもある)を持つ人もまれにいる。血液型キメラあるいは血液型モザイクといって自然界では70万人に一人の割合だという。

 冒頭の非分泌型の人はノロウィルスに感染しないという報告がある。ノロウィルスは、口などから体内に入ると、胃や腸の粘膜に存在する糖鎖を足掛かりにして体内にとどまり感染するといわれる。非分泌型では、消化管の粘膜(粘液)に糖鎖が存在しないため、ノロウィルスが体内にとどまることができないらしい。一方で、非分泌型は全身性の炎症、糖尿病、自己免疫疾患にかかりやすいそうだ。

 AB型は認知症にかかりやすく、O型は冠動脈疾患にかかりにくい一方で蚊に刺されやすく、A型はピロリ菌に弱い、などの報告もあるが、統計上のわずかな違いともいえるし、血液型による性格分類には何の科学的根拠もないそうである。

 血液型は300種類以上の抗原の組み合せによって決まるため、その組み合わせは数兆通りにもなるので、一卵性双生児でもない限り、世界中を捜しても自分と完全に同じ血液型をしている人はいないという説もある。実に複雑である。

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