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梅芽吹くとき、花粉飛び散るとき

主幹研究員 加藤竹彦

 近所の梅が満開である。2月の寒い頃から咲き出していた。今年の冬はことのほか寒かったのに、野の植物はなぜ時期を違えず芽吹くのだろう。

 花粉もしかりである。やっと寒さが緩みだしたと思った途端に盛りになる。そういえば花粉は、日々の気温を積み上げて、それが一定値を超えると飛び始める、と聞いたことがある。開花も似たような仕組みなのだろうか。不思議に思って少し調べてみた。

 正確かどうかは別として、自分なりの理解でまとめてみた。植物は体内時計を持っている。一日(24時間)、一年(365日)のほかに、月の満ち欠けの周期(29.5日)などのリズムも体内にあるという。どこにあるかといえば、すべての細胞内、つまり遺伝子に組み込まれている。また、植物は葉や茎に光センサーを有していることがわかっている。光センサーには、フィトクロム(赤のセンサー)、クリプトクロム(青のセンサー)などがあって光の色や強さや方向などを感知することができる。

 動物の場合、光の刺激は脳で感知され、情報として処理されるが、脳を持たない植物では維管束にある組織が司っているのではないかということが最近の研究でわかってきた。光の刺激は日の長さ(日長)として把握され、それが体内時計と呼応し季節を知る、それによって花芽を誘導する花成ホルモン(フロリゲン)が葉で生成され、師管を通って茎頂の成長点に運ばれて開花する。ちなみにこのフロリゲンは、提唱されてから2007年に見つかるまで約70年間その存在が確認されなかったため、幻の植物ホルモンといわれている。

 一方、植物の多くは冬のあいだ休眠することが知られている。これは冬が近づくにつれ短日になり、気温が低下するため、植物が厳しい環境の到来を知り、成長を停止するメカニズムであるが、このことから植物も温度センサーを持っているであろうことは容易に理解できる。ところが、植物のどこに温度センサーがあるのか、いまだ解明されていない。昨年11月、京都大学が科学技術振興機構とともに発表した論文で、表皮にある体内時計が温度情報を処理し細胞伸長を制御していることをつきとめている。

 もし、植物の温度感受の仕組みが解明されれば、農業分野において大きなブレークスルーになるばかりでなく、この時期、花粉症に悩む方々にとっても福音となる可能性を秘めている。

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