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サロン講演録

ビットコインについて

 3月7日、国際大学GLOCOM客員研究員の楠 正憲氏に「ビットコインについて」と題してご講演いただいた。以下は講演内容の抄録。

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はじめに

 本日はビットコインについてお話させていただくが、この数日に様々なことが起き、また政府のビットコインへの対応がちょうど始まったところでもある。従って話の何割かは変わるかもしれないが、今日時点でのお話をさせていただく。

最近のビットコインの動き

 今年に入ってから、ビットコインに関連する報道が毎日のようにある。はじめて脚光を浴びたのは昨年10月に、Silk Roadという米国の違法サイトが摘発され、決済手段としてビットコインが使われていたことだった。当時すでに1千億円近く流通していて驚いた。あれよという間に1000ドル以上になった。フォーブスが「グッバイシルクロード、ウエルカムチャイナ」という記事で、中国の外為規制を回避するためにビットコインが大流行りすることを伝えた。中国人民銀行が金融機関は扱ってはならない、これはお金ではないと通知したため、500ドルくらいに下がったが、最近また900-1000ドルくらいまで戻したかと思えば、MtGOX倒産で下がり、ウクライナ危機でまた上がる、という状況である。

ビットコインとは

 ビットコインは他の電子マネーと呼ばれるものと何が違うか。一番のポイントは運営者がいないことである。スマホやパソコンで簡単に個人間決済が可能なことや、将来的に発行量も決まっていることもある。独自の為替レートを持ち、信用創造も可能である。発行残高が決まっているので、量的緩和を繰り返す管理通貨よりインフレに強いと言う人もいる。またパケット通信が可能ならどこでも自由にやり取りできるため、個人間で簡単に国際決済ができ、外為規制にも引っかかることもない。

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 ビットコインを最初に発明した人は相当儲けているはずである。100億円近く儲けている可能性がある。ふつう電子マネーは設備費がかかり、シニョレッジ(通貨発行益)はないが、ビットコインに関する限り、かなり通貨発行益に近いものがある。同時にネットワークの決済を支えている人たちも発行益の一部を得ている。

ビットコインの特徴

 ビットコインをなぜ使うかというと、為替手数料の節約もあるが、やはり匿名性が高いので麻薬取引のような違法なものに向いているとか、厳しく為替規制されている国でも海外に自由にお金を送ることができることなどがあげられる。また投機もある。この1年で10倍以上の価値になっている。ビットコインに投資している人のアンケートでは、今年の末には1ビットコインが100万円くらいになると信じている人もいる。

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 現在の流通量は今の相場で8000億円くらいである。1件あたりの平均取引額が742ドルで、相当高いと言える。きっと悪いことに使われているに違いない。一日当たりの取引件数は約5万件から10万件を推移している。

 ビットコインはマイクロペイメント(少額決済)に向いていると言われるが、本当にそうだろうか。取引はマイニングという作業で定期的にコンファームされるが、1取引あたり33ドル近くかかっている。決済手数料が5%くらいであり全然安くない。ただこの33ドルを利用者は払っていない。ビットコインを使うと決済手数料は0.0001ビットコインなので、今のレートでいくと6-7円。それなのに1取引当たり33ドルをマイナーに払っている。この33ドルはいったいどこへ行ったのか。

 33ドルは通貨発行益であり、それを誰が払うかというと、将来の値下がりで損した人ということになる。これはフェアとはいえない。企業がユーザにポイントを提供するケースがよくあるが、これをビットコインのようなしくみでやればいいという議論があるけれども、絶対やってはいけない。


ビットコインの仕組み

 ビットコインの仕組みをすごく簡単に説明すると、手形の裏書のようなものである。使いたいビットコインに秘密鍵で署名し、次の人に渡ったということをネットワーク上で広報する。それだけだと誰かに署名して渡した後にまた別に使うという二重利用ができるので、どうやってそれを防ぐか、というのが「ナカモト論文」のキモである。

 Proof of Workというシステムを使って10分に1回ずつ、取引にタイムスタンプを打っていく。タイムスタンプが打たれたところで取引が完了し、二重取引がないことが保証される。

タイムスタンプを打つ際、取引ごとのデータブロックはハッシュという文字列をもっており、次のデータブロックを作るには前のハッシュに特定の条件(例えば0が頭に8数個並んでいる)を備えたnonceという文字列を計算で求めることが必要になる。このnonceを求める計算がマイニングと呼ばれる。


 マイニングは金の採掘のたとえで考えられてしまう。金は掘らなくても今あるもので流通するが、ビットコインの場合、マイニングは10分おきに取引を約定させるトランズアクション処理そのものであり、マイナーがいなくなると流通が止まってしまう。マイニングをやり続けない限りどこかで止まってしまうというのが実は大きな問題である。


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 マイニングは、高速な専用の半導体チップを使って組織的にやらないと儲からなくなっている。専用チップも去年までは64ナノチップと何世代か前の半導体だったが、今や26ナノや20ナノとほぼ世界最先端のチップが出始めている。

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 ビットコインの歴史に触れると、2008年11月にメーリングリストに論文が掲載され、2009年1月から運用を開始している。「ナカモトサトシ」と呼ばれている人物は2010年半ば頃から姿を消している。彼が一体誰かについては、ずっと色々な情報が出続けている。


 ビットコインによる最初の「もの」の売買は2010年5月に、フロリダ州に住んでいる人物が、ビットコインの掲示板に1万ビットコインでピザ2枚買いたいと書いたら、ヨーロッパに住んでいる人が3-4日かけて送ったものである。当時は41ドルだったが今では6-7億円に相当する。

 ビットコインだけ脚光を浴びているけれども、今日時点で数百種類の暗号通貨が存在する。グーグルは数年以内にこの領域を手掛ける可能性がある。彼らは世界中で同じようなサービスを提供しているから、国の枠を超えたお金が出てくると決済インフラの弱い国のマーケットで使いやすいし、税金対策もやりやすくなる。


MtGOXの破たん

 MtGOXの破たんは2月25日だったが、ビットコインの支払いを停止したのは2月7日である。払い出せない状態になって、外国人ユーザの取り付け騒ぎになった。MtGOXの12万口座のうち、日本人の割合は0.8%以下で、ほとんど外国向けに提供していた。


 MtGOXの破たん理由もいろいろ言われている。彼らは、ビットコイン自体のバグがあって抜かれていたと言っているが、嘘ではないだろう。ただ2月にどっと消えたことは説明できず、おそらく去年の秋頃から少しずつ抜かれていたのだろう。ほかにも古典的な不正侵入や、ビットコインを大量に売り浴びせられたりしたのではないか。今後の取り調べで、不正な取引があったかどうかなどが明らかになることもあるだろう。すべての取引はネット上に残っており、それらは15ギガバイトくらいしかないので、おそらく分析していく過程で、マウントゴックスは何回二重払いしていくら抜かれたか、などが正確に判明すると思われる。


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各国の動き

 諸外国の動きはシンプルで、外為を自由化している国は条件付きで認め、外為を規制している国は血眼になってルールを作っているけど施行できていない状況。アメリカは結局、FinCENというマネーロンダリング対策の部門がガイドラインを出し、ビットコイン取引所の法的に認めた。また上院で公聴会が開かれたりしてビットコインが流行るきっかけになった。なぜアメリカがここまでおおらかなのだろうか。


 今のところ私の解釈はふたつで、ひとつは外為規制を無力化し、外交交渉なしに実質的にすべての国をドル経済圏に組み込んでいくことができる。もうひとつは、闇ドルの取引や、アメリカからの照会に回答しない国での資金の流れを知る方法となる。ビットコインは匿名性があるといっても動きはわかる。動きが活発化しているだけでもデータが取れるし、取引所を認めることで本人確認義務を課して口座の身元を判明させていけば、調べる取引について聞き込みをしていけばたどり着けるようになる。いわば地下経済のオープンデータという意味でもテロ対策の観点からは魅力がある。


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日本の動き

 日本国内での規制について、いまのところ資産に近い位置づけとなるが、法改正はせずとも他の法的位置づけも考えられる。例えばビットコインを法定通貨として扱う国が現れた場合には、外国為替法で外国通貨として財務大臣が指定をすれば外為として扱えるし、金融商品取引法では第2条21で有価証券の定義について「流通性その他の事情を勘案し、公益又は投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして政令で定める証券又は証書」と規定しており、政令で明確に書き込んでしまえば有価証券として扱うこともできる。残念ながら資金決済法はだいぶスキームが違いすぎて大規模な法改正が必要になるので、当面あえて資産ではない扱いを考えるとしたら外国通貨か金融商品というところだろう。いずれの場合も資産として扱う場合と比べて税捕捉こそ容易になるものの、購入に消費税をかけず、金融機関が正規にビットコインを取り扱えるようになるため、明確な意図を持ってビットコインの普及を促進させたい理由がない限りは検討されないのではないか。


 ビットコインの法的位置づけが明確になることで、Googleをはじめとして、これまで独自の貨幣発行を試みながら規制を理由に諦めてきた企業にとっては、独自の貨幣発行の道が開かれる可能性がある。実需がどれだけあるか定かでないとはいえ、全取引データを誰もが自由に分析できるフィールドはこれまでなかった。テロやマネーロンダリング対策、犯罪捜査を皮切りに、ビットコイン取引データの分析技術は向こう数年で飛躍的に伸びると考えられる。

 このようなビッグデータから得られる情報があるにも関わらず、日本で取扱いがないことには、エンジニアも育たない可能性を懸念している。また、日本拠点の大企業でグローバル貨幣を出そうとするところが出てくるか全く見えない中ではあるが、ビットコインを萌芽として、こうした動きが大きな流れになっていくかをしっかり見極める必要があるのではないか。

(文責:加藤)