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IISEシンポジウム「IoT ・AI時代の健康寿命延伸」
2017年3月21日
2016年度のIISEシンポジウム「IoT ・AI時代の健康寿命延伸」が、オランダ王国大使館後援、特定非営利活動法人情報通信政策フォーラム協賛で日経カンファレンス&セミナールーム(大手町)にて開催され、100名近い参加者にお集まりいただき、盛況のうちに終了いたしました。
基調講演では、総務省と厚生労働省からご登壇いただき、総務省 情報流通行政局情報流通高度化推進室室長の吉田宏平氏は、「IoT ・AI時代における医療・介護・健康分野のICT化」(吉田氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)と題し、EHRやPHR等のヘルスケア分野のデジタル化への政策的なお取り組みと今後の方向性についてお話いただき、新しい技術であるAIやIoTを活用したサービスが、国民だけでなく、医療・介護等の従事者の利便性向上にどう結びつけられるかがこれからの課題になるとのご示唆をいただきました。
引き続き、厚生労働省 情報化担当参事官室政策企画官の橋本敬史氏からは、「ICTを活用した『次世代型保健医療システム』の構築に向けて」(橋本氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)と題し、昨年10月に公表されたeヘルスに関する提言を中心に、ヘルスケア関連のデータを「つくる」、「つなげる」、「ひらく」の3つの視点で活用するためのプラットフォーム構築の必要性と具体的なロードマップについてお話しいただきました。この分野においては、政府の基本方針である日本再興戦略に沿って、関係省庁が協力しながら進めていらっしゃるとのことで、健康・医療・介護分野におけるICT活用が着実に推進されることへの期待が高まりました。
地域での先進的な取り組みをご紹介いただく特別講演は、松本市 商工観光部部長(健康産業担当)の平尾勇氏より「松本ヘルス・ラボから始める松本版PHRの構築~電子版健康手帳の普及を目指して~」(平尾氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)と題してご講演いただきました。松本市は、2009年より「世界健康首都会議」を毎年開催し、健康文化の醸成や市民への浸透を図ってこられ、2011年に発足した産官学組織である松本地域健康産業推進協議会が地域の健康づくりをけん引されてこられました。協議会では、市民の健康づくりの場であり、かつ企業の製品の改善・評価を合わせて行うことができる「松本ヘルスラボ」を運営し、ここをさらに発展させ、「松本版PHR」の構築を進めようされています。鉄道会社は地域ごとに存在するが、軌道が同じであれば、日本中でつながっているように、地域の取り組みである松本版PHRも、市民にとって快適なものが構築できれば、地域同士がつながり全国展開へとつなげられるのではないかという、次なる展望もお聞かせいただけました。
講演の最後は、弊社主幹研究員の遊間和子から「オランダにおけるPHRを中心とした健康寿命延伸への取り組み」(遊間のプレゼン資料はこちらをクリックください)が報告されました。オランダでは、公民連携のMedMijプロジェクトが発足し、PHR推進のために、病院に保管されている自分自身の医療データや個人的に利用しているウエアラブルデバイスのデータを自分が選択したICTベンダーのPHRプラットフォームから簡単に閲覧できるような仕組みを進めています。健康行動へのインセンティブとなる仕組みを提供するベンチャー企業HealthCoinや、認知症患者の自立を支援するスマートハウスを研究する看護・介護組織Tangenborghなども紹介され、ヘルスケア分野のICT化を、政府は大きな枠組みを示し、あとは民間に任せる形で活性化しているとの指摘がされました。
パネルディスカッションでは、冒頭に、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)常務理事の坂下哲也氏(坂下氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)と国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター首席研究員の西田佳史氏(西田氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)から話題提供をいただきました。
その後、東洋大学経済学部の山田肇教授にコーディネーターをお願いし、松本市の平尾部長、ケアプロ株式会社 代表取締役社長の川添高志氏、東京大学 高齢社会総合研究機構協力研究員/一般社団法人セカンドライフファクトリー代表理事の矢冨直美氏にも加わっていただき、IoT ・AI時代の健康寿命延伸のありかたについてご議論いただきました。ヘルスケアデータ利用時の個人情報保護の問題や、社会参画や高齢者雇用による健康維持、高齢者行動のセンシングと人工知能AIを用いた分析など、多様な側面からの発言があり、今後の課題と方向性が明らかになりました。
パネディスカッションの後半では、会場からの質疑応答に加え、本シンポジウムの後援をいただいたオランダ王国大使館のJan-Hein Chrisstoffels科学技術参事官から、「eHealth分野での日蘭協力を進めていきましょう!」という力強いコメントをいただきました。
最後に、アクセシビリティ研究会の主査でもある東洋大学経済学部の山田肇教授から、本日のシンポジウムでのスピーカーからのご発表もふまえ、アクセシビリティ研究会での2016年度調査研究活動からの提言(山田氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)をご報告いただき、閉会いたしました。
スピーカーとプログラム
14:00 | ご挨拶 | 鈴木 均 株式会社国際社会経済研究所代表取締役社長 |
14:05 | 基調講演① 「IoT ・AI時代における医療・介護・健康分野のICT化」 |
吉田 宏平 総務省 情報流通行政局情報流通高度化推進室室長 |
14:25 | 基調講演② 「ICTを活用した『次世代型保健医療システム』の構築に向けて」 |
橋本 敬史 厚生労働省 情報化担当参事官室政策企画官 |
14:45 | 特別講演 「松本ヘルス・ラボから始める松本版PHRの構築~電子版健康手帳の普及を目指して~」 |
平尾 勇 松本市 商工観光部部長(健康産業担当) |
15:20 | 海外事例報告 「オランダにおけるPHRを中心とした健康寿命延伸への取り組み」 |
遊間 和子 株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員 |
15:40 | パネルディスカッション 「IoT ・AI時代の健康寿命延伸のありかたとは」 |
コーディネーター:山田 肇 東洋大学 経済学部教授/アクセシビリティ研究会主査 パネリスト: 川添 高志 ケアプロ株式会社 代表取締役社長 坂下 哲也 一般財団法人日本情報経済社会推進協会 常務理事 (五十音順) |
16:40 | 「まとめと提言」 | 山田 肇 東洋大学 経済学部教授/アクセシビリティ研究会主査 |
16:55 | 閉会 |