報告書「ネット上の新しい壁に関する調査研究」
【執筆者】
日本側メンバー:
山内康英(多摩大学情報社会研究所 教授)
山本達也(名古屋商科大学講師)
原田 泉(国際社会経済研究所主席研究員)
中国側メンバー:
張 力(中国現代国際関係研究院 安全保障・戦略研究所副所長)
胡 継平(中国現代国際関係研究院 院長弁公室主任)
インターネットには国境が無く、フラットな世界を創造すると言われてきた。実際、そういった機能を発揮したことは事実だが、その反面、インターネットが全世界に普及し、その影響力が拡大して社会的重要性を増すにつれ、インターネットの中には、様々な「新しい壁」が出来つつあるように思われる。
インターネットが生み出す新しい世界とは、これまでコミュニケーションが出来なかった人々を、国境を越えて結びつかせることによって、新しいグループ・集団・コミュニティを形成させ、教育の普及も促進させる力がある。これによって、インターネットは途上国の「近代化」を促進し、「文明の衝突」を回避するような側面を持つのである。しかし、それに対する反動として「文明」内の結束を強化するためのツールとして利用される側面も持つことを忘れてはならない。すなわち「文明」間の壁を低くすると同時に高くしようとする力にもなっているのである。
一方、ネット上には現実の国家関係を反映して新しい「国境」が、構築されたり、既存の国境を越えて、また国内にあっても民族や宗教、言語、経済、思想といったことを軸に新しい繋がりを形成して、現実の社会関係に影響を与えるようになっていると思われる。このようにネット上の「壁」は、多様な形態を呈し、その高低も様々である。
本報告書では、上で述べた問題意識をもって、日本と中国、加えてイスラム圏におけるインターネットにおける「新しい壁」に関し、調査研究し、今後のインターネットの姿を考察した。
