C&C振興財団委託調査報告書
「ユビキタス都市IV:ユビキタス都市に期待される生活者ニーズに関する調査研究」
2005年4月〜2006年3月
【執筆・担当者】
小泉雄介 (株式会社NEC総研 研究員)
原田泉 (国際社会経済研究所 主席研究員)
わが国では携帯端末、無線LAN、RFIDタグ、センサー等の要素技術の開発や、防犯セキュリティ分野、情報家電分野、携帯電話アプリケーションなど民間部門のサービス開発においては最先端を走っているが、国としてユビキタス社会をどのように実現するのか、都市にどのように計画的にユビキタス技術を導入していくかというビジョンに乏しい。一方で韓国は、要素技術の開発やユビキタス関連サービスの提供では日本に遅れるものの、情報通信省が強力にu-Korea政策を推進しており、プサンをはじめとする地方都市も自らのイニシアティブでユビキタス・シティ構築の基本計画を策定している最中である。ただし、1月に日韓で実施した、ユビキタス社会に関する生活者意識調査では、日本の生活者は韓国に比べて、全般的にユビキタス関連サービスの利用・導入に慎重な態度を見せており、「いつでもどこでも誰とでもつながる」というユビキタス社会のコンセプトに対して否定的な見解の人は25%もいる。また、携帯電話、公衆無線LAN、ネットワークカメラ等のユビキタス関連サービスが普及した場合の不安点として個人情報の悪用や行動の監視などのプライバシーの問題や、サイバー犯罪等のセキュリティの問題を挙げる人が多かった。本報告書では、日本および韓国におけるユビキタス・シティ実現に向けた官民の取り組みについて調査を行ない、わが国においてIT政策を実施する上では、こうした生活者の声を踏まえ、拙速にIT化・ユビキタス化を推進するのではなく、IT化による負の側面に対処しながら慎重に歩みを進める必要があるだろう。