報告書「ネット覇権とインターネットガバナンスに関する調査研究」
【執筆・担当者】
日本側メンバー:
山内康英(多摩大学情報社会研究所 教授)
山本達也(名古屋商科大学講師)
原田 泉(国際社会経済研究所主席研究員)
中国側メンバー:
張 力(中国現代国際関係研究院 情報・社会発展研究所所長)
李 艶(中国現代国際関係研究院 情報・社会発展研究所副研究員)
IT革命以降、インターネットの世界を含めネット上の覇権は、インテル、マイクロソフト、グーグルといった産業・企業面、またインターネットのガバナンスを担当するICANにおける委員構成等に象徴されるように、米国によって一極集中的に支配されてきた。そこには、国際社会におけるよりも更に強固な覇権が存在していた。しかし、今般の世界的経済危機は、国際社会における米国の一極支配構造の終焉を意味し、多極化の方向へと進むように思われる。ネット社会における覇権構造もこうした国際社会の趨勢に応じ、多極化を迎えるのか。米国は、オバマ政権のグリーンITによって覇権を維持するのか。中国は絶対的なインターネット利用量や国家投資によって覇権の一極を担えるのか。また、イスラム人口は1980年には世界総人口の18%を占めていましたが、2025年には25〜30%に達すると思われ、インターネットも急速に普及している。イスラム諸国は、インターネットによって宗教的結束で一つの極となりうるであろうか。また、IGFやICANといった国際機関の動向は今後どうなるのか。
本調査では、上記の問題意識をのもと、今後多極化における一つの極となるであろう中国の動向を中国現代国際関係研究院に、またインターネットガバナンスの焦点となるIGFやICANといった国際機関の動向、イスラムの動向を多摩大学情報社会学研究所との共同研究で調査し、ネット覇権の多極化の状況を分析するとともに今後の日本のあり方を考えた。