NEC C&C財団委託調査報告書「地域情報化のさらなる展開I:地域の安心・安全のための情報化のあり方」
【執筆・担当者】
上村圭介(国際大学GLOCOM主任研究員・准教授)
庄司昌彦(国際大学GLOCOM主任研究員・講師)
原田 泉(国際社会経済研究所主席研究員)
遊間和子(国際社会経済研究所主任研究員)
わが国の電子政府・電子自治体を構築するために進めてきた住基ネット・住基カードや公的個人認証、電子申請は、利用率の伸び悩みや、利活用できる分野が少ないことなどが指摘され、一般への浸透は未だ十分とは言いがたい状況にある。
昨年度のNEC C&C財団委託調査研究では、電子申請の際に本人確認がスムーズに安心して行われるための住民データベースのあり方、国民IDのあり方について検討した。
今年度の調査研究では、社会保障分野や行政サービスの分野における本人識別IDの活用に焦点を当て、官民の情報システム・サービスはどのように役割を分担し、どのように連携するべきか、個人情報やプライバシーは、サービスの種類や程度等に応じてどうコントロールされるべきか等、より多くの人が地域で安全・安心な生活を送るための情報システム・社会システムについて調査研究を行った。
本報告書では、国内・海外の調査から、現在わが国で検討されている社会保険カードについて、政府による独立の取り組みとして進むのではなく、地方自治体が普及・利用を進めている既存の住基カードと一体的な取り組みとして進めるべきであると提言した。またオーストリアにおける官民のシステム連携のための取り組みや普及のための取り組み、ドイツにおける官民連携の具体的な設計、フランスにおける政府と企業と市民がオープンに議論する中から合意を形成しようとする取り組みなどは、わが国の安全安心な地域情報化のあり方に対して大きな参考となることが示された。