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国際社会経済研究所
Institute for International Socio-Economic Studies
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シンポジウム

新春セミナー
「イラク情勢と日米関係」

2004年1月29日

2003年1月29日 NY市立大学の寉見芳浩教授をお招きし、国際大学GLOCOMとの共催にて新春セミナー「イラク情勢と日米関係」を開催いたしました。今最も関心の高いテーマだけに、会場にも多くの聴衆の皆様にお集まりいただき、質疑応答の時間が足りないほどの熱気となりました。セミナーの概要につきましては、下記をご覧ください。なお、本セミナーの英文でのレポートについては以下のURLをご参照ください。
http://www.glocom.org/special_topics/activity_rep/20040206_miyao_glocom/

写真 関本理事長と宮尾教授
▲ 挨拶する関本理事長と司会の宮尾GLOCOM教授

写真 寉見教授
▲ 体を乗り出すように講演される寉見教授



1. イラク攻撃の背景

イラク情勢にしても日米関係にしても、今年行なわれる大統領選挙にすべて左右されるので、そこに焦点を当てたい。まずイラクについては、ブッシュ大統領がイラクを攻撃するプループリントは、言い訳としては2001年の9月11日のテロ攻撃を受けてテロ攻撃のために作ったとしているがこれはフィクションである。むしろ第一次湾岸戦争直後の1993〜94年にできていたということがはっきりしてきている。ただし、米国民向けの説明では、アルカイダ組織の攻撃とテロの恐怖を減らすという建前なので、イラクのサダム・フセインとテロとの関係を何とかこじつけるために、アルカイダの後にいるのがサダム・フセインであり、しかもイラクは大量破壊兵器を開発し保有しているという第二のフィクションを作った。これで米国民の危機感を煽ってイラクを攻撃した。しかしそのようなことがすべてフィクションであったことが明らかになっている。

それではなぜ2002年秋以降になったのか。それは2002年11月の中間選挙で共和党が上下院の多数を占めるためであった。そのころブッシュ大統領の支持率は50%を切っており、黄信号の状態であった。これは2002年の春から夏にかけてブッシュ大統領が応援していたエンロンのような大企業の腐敗と株価下落で米国民もおおいに怒りを表していたからである。そこでブッシュ政権は、2002年の夏休み明けに、イラクが大量破壊兵器を開発して大変危険であるということを書き立て、国連に頼っていたのではそれを除去できないので、米国が自分の安全のために単独でも攻撃しなければならないと主張し、結果としてブッシュ大統領の思惑通りことが運び、11月の中間選挙で共和党が上下院で多数を占めることに成功した。その後約4ヶ月かけて兵隊をイラク周辺に送って攻撃の準備を行なった結果、25万人以上の兵隊を張り付けて連夜猛訓練をして、兵隊の緊張感が高まっていった。それを長期に保ち続けることは出来ないので、3月の末に攻撃を行なったわけである。

そのブループリントを作ったのはブッシュにアドバイスを与えているメンバーで、もしブッシュがアフガニスタンの失政、イラクでの失敗で、大統領で民主党の候補と接戦になったら、新しい危機を作り出す必要があり、そのためには北朝鮮を手付かず残しておくのが便利で、今ミサイルや核の問題を米朝直接交渉で今薄めてしまうのは少し早すぎると考えているようなグループである。

2.米大統領選の行方

大統領選挙については、2000年にはブッシュはトータルの得票では負けたが、人口が比較的少ない州を押さえて何とか必要な代理人の数を獲得したので、今回の「夢よもう一度」と同じ戦略を考えている。そのために、特にコンサーバティブな南部の州、テキサスなどを押さえれば勝つことを狙っている。

そのようなブッシュ大統領の政治的計算が日米関係に影響するのは、例えば米テキサスの牛肉の購入を最大の輸入国である日本に要求するという形をとる。BSEのために全頭検査で輸入禁止している状況について、ブッシュ政権は小泉政権に輸入再開への圧力をかけている。そうでないとブッシュの政治的立場が少しおかしくなるかもしれない。

今のところの見通しは、アイオワ州の民主党党員集会以前はブッシュが逃げ切る確率は8割ほどあったが、アイオワの結果を見るとその確率は6割に落ちた。後はニューハンプシャーでその傾向がどこまではっきりするかで、民主党と共和党との一騎打ちが一方的なるか、民主党の勝利の可能性が出てくるかが決まる。どうやら五分五分の情勢になってきた。その傾向というのは、国がネオコン派の支持者とそれに反感を持つ派に真っ二つに割れて、中道派が薄れていく傾向である。そうすると民主党としてはこれまで投票しなかった無党派層、ブッシュの経済政策の犠牲者になっている経済的には中の下の層を掘り起こせば南部で一つくらい州が取れるかもしれない。一方ブッシュはできるだけしらけた選挙にしたいであろう。その点では、大統領選が少し面白くなってきている。

争点としては、まずイラクを含めた米国の安全保障の問題が大きな争点となる。そこでアイオワ以来、民主党員がディーン候補からケリー候補に鞍替えしたのは、やはり選挙に勝てそうな傾向がでてきて、勝ちたいと思い始めたからであり、安全保障問題をはっきりと突くことができて、発言に信憑性のある一番の候補がベトナム戦争の勇士のケリーであり、「一番当選しやすい候補」として浮上したのである。一方、ブッシュはベトナム戦争については、州兵としての兵役から「逃亡」したが、何とか普通除隊扱いにされたという経歴がある。

3.イラクの「石油付沖縄化」

さて11年前にブッシュ・グループによって準備されたイラクのグループリントについては、それはイラクの「石油付沖縄化」を狙うものであり、恒久軍事基地化および石油の産出量と価格の決定権を獲得することである。つまり、半永久的占領ないし駐屯であり、それに日本の自衛隊が「傭兵」として出て行って手伝わされているというのが現状である。なぜ石油かは、第一次湾岸戦争後の国際的な制裁の下でイラクの石油を一番多く買い続けてきたのは米国であったことを見れば分かる。

少し長期的にみると、現在はハイテク情報化時代を支える新しいエネルギーシステムに向かっているが、20世紀の運輸通信システムをささえたエネルギーは石油と天然ガスであり、それは後20年ほどで世界の総産出量がピークに達する。しかも中国はネットの輸入国になっている。ブッシュ・グループを支える軍需産業や石油・天然ガス産業は、新しいエネルギーシステムに移行する前に、石油システムの支配権を確固たるものにしたいと希望している。その点でイラクの石油埋蔵量は、サウジアラビアについで世界第二位であり、それをサダム・フセインが握っていることには、ブッシュとしては耐えられなかった。しかも、サダム・フセインはブッシュが大統領になると決まったとたんに、それまでのイラク原油輸出はドル建てだったものをユーロ建てに変えたので、ドル支配に対する挑戦であり、サウジアラビアもそれに追随する様子を見せたのである。そこでイラクを支配して、ドル建てに変えて、さらにOPECを壊したい、あるいは影響力を弱めたいというのが狙いであった。

したがって、イラクでは表向きは主権をイラク人に委譲すると米国は行っているが、それはありえず、半永久的な占領を続けると思われる。少々兵を引いたとしても、イラクに軍事基地を確立して、サウジアラビアからも兵力を移動している。しかし米国民を納得させるためにも、今年6月30日までに民政移管を進めることにしているが、なぜ6月末かといえば、それは大統領選が7〜8月に本格化するからである。7月に民主党の党大会があり、8月には共和党の大会がある。

イラクについては、ブッシュはイラクを戦争でたたけばイラク人はひれ伏して、米国支持に回ると踏んでいたが、そのようにはなっていない。5月1日に戦争の終了宣言をした後もテロが続き、戦死者が増えている。さらに、戦死者の8〜9倍が負傷者と考えられる。現段階で600人ほどの死者が出ており、今後とも増え続けるとみられる。それでブッシュは困って、イラクについては連合国の支持がたくさんあることを強調して、国民を納得させようとしている。そこで目立つ大きな国である日本が自衛隊を派遣することは助けになる。ブッシュの年頭教書で日本を三番目に上げたので、日本が高く評価されているという話しがあるが、他にあまりたいした国がないだけである。今後米国の占領は続くので、それに協力する日本の自衛隊がイラク人に攻撃の標的にされる恐れは十分にある。

4.日本がなすべきこと

日本にとってイラクよりも脅威なのは北朝鮮であるが、それには米国は取り組んでいない。そこで日本は以下のことをやるべきである。米国からの経済的な圧力、BSEの牛肉の購入を要請したり、イラク占領に協力的な国に日本からの援助を要求したり、さらに円高圧力を強めるので、それへの対処が必要であること。さらに日本にとって重要なのは、今回の自衛隊派遣について、日本として派遣の正当性が必要で、それには国連を引き出すことが不可欠である。またイラクは日本にとっても石油がからんでいることは確かなので、それについて日本独自のスタンスで、例えば米国が反対してもイランとも石油開発を続け、またロシアとの石油パイプラインについての交渉も進めて、米国にはその点をはっきりさせればいい。それから一番大切なのは、米朝直接交渉を行なうよう米国に要請することである。それによって米朝不可侵条約の締結をもたらし、それへの見返りとして北朝鮮の核とミサイルの脅威を取り除くよう努力し、日本としても経済技術援助を出してそれを後押しすべきである。そうでなければ日本が重視している拉致問題も解決しないであろう。

日本として、もしヒトやカネを出さざるを得ないのであれば、小泉首相はやはり日本の国益を考えて、少なくとも5年後の日本にためになるようなことを考えるべきあるが、残念ながらそのようなビジョンがない。したがって日本経済の再興は10年かけてもできなかった。不良債権をなくし、構造改革を行なって、どういう国にしたいのか、日本の安全保障と生活水準の向上を目指し、そのために国際協調を行うという全体のビジョンがなく、部分的に少しずつ何かやっているだけである。したがって改革も進まない。日本には光も望みもあるが、日本再興に残された時間はあまりない。それは政治のリーダーに問題があるからで、日本も米国も政権交代が必要であるというのが私の結論である。

(文責:GLOCOM宮尾尊弘教授)


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