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中南米に見るBRT(Bus Rapid Transit)関連ICT市場の拡大

主幹研究員 山田文明

国際社会経済研究所ではBRT(Bus Rapid Transit)分野の成長性に着目し、これまでその先進市場である中南米のブラジル、チリ、メキシコにてBRTの現状と今後の動向につき調査を行ってきた。今回はコロンビアとペルーにて現地調査を実施したのでその結果を踏まえて報告する。

1. 市場の拡大

中南米各国においてBRTの本格的な導入が始まったのは2000年以降のことである。当初の予想を上回る乗車率等からその導入効果が認められ、まず首都圏 の大都市からサービスが始まり、現在は全土の地方都市へと導入が拡大しつつある。ブラジルでは来年のリオ五輪での主要な移動手段として急ピッチで建設が進 んでいる。

BRTはもともとブラジルのクリチバ市で始まり、2000年以降は中南米の他地域に広がった。今では中国、インド、インドネシ ア等アジア地域でも導入され、さらにアフリカ地域でも交通渋滞対応の有効な手段として南アフリカを皮切りに他の国でも導入に向けた検討が始まっている。世 界資源研究所によれば2015年8月時点で世界195都市にて400を超えるBRT路線が運行されている。BRTはICT武装化されており、その世界的な 普及に伴いBRTのICT関連市場も拡大している。BRTを含む都市交通のICT関連市場規模は130億米ドル(約1.6兆円)と推定されている(ゼロッ クス社の調査資料、2015年版)

日本でも東京都が今年の4月に五輪に向けて都心部とオリンピック関連施設が整備される臨海部とを結ぶ BRTの基本計画を発表した。日本ではBRTが本格的に導入されてこなかったため日本のメーカーはこれに使われる大型連結バスをこれまで製造しておらず、 町田市など小規模ながらBRTを導入したところはベンツやボルボなどの海外メーカーのものを輸入し対応してきたが、最近になっていすゞ自動車と日野自動車 がBRT向けバス車両開発を共同で行う計画が発表されている。

他国に一歩先んじて大規模展開に成功したコロンビアのBRT運営会社であるトランスミレニオは、その成功を基にアジア、インド、アフリカなどの新興国・途上国とコンサル契約を結びBRT導入支援を行っている。今後BRTの導入は世界中に拡大していくものと思われる。

2. TOD(Transit Oriented Development)の概念とBRT

国連によると世界人口は現在の73億人から2100年には112億人へと大幅に拡大すると予測されている。アフリカ・アジアを中心とする新興国・途上国での人口増加が顕著である。また、人口増加国だけでなく減少国でも人口の都市部への集中化傾向が強まると予測される。
 
急 激な都市化に伴い様々な問題の発生が予想されるが、都市のあるべき姿としての将来ビジョンを描く時に、交通は人々の日常生活に欠かすことが出来ない、第一 に考えねばならない重要な社会インフラである。特に近年、新興国において急激な人口増加に伴う慢性的な渋滞や環境の悪化に対処する為に、自動車に依存しな い公共交通機関の利用を前提としたTOD(Transit Oriented Development) という都市開発手法が注目されている。TODコンプセプトは、途上国における都市の急速な成長と増加する都市交通システムへの投資を背景に、世界銀行が支 援する公共交通指向型開発の概念である。

TODの概念に基づくと、メトロ、LRT(Light Rail Transit)、BRT、自転車、歩道等の移動の手段が総合的に考慮され、特にBRTがこれからの課題解決の為に有効な中核的な手段として注目されてい る。世界銀行はこのコンセプトを基に環境志向と投資効果が高いBRTの導入を資金面から支えている。

3. BRTの利点

大都市及びその周辺でバスを使って大量公共旅客幹線輸送を実現するBRTシステムは、工期が短く費用対効果が優れているという点が評価されている。一般的 にBRTの距離当たり単価と建設工期は、軌道系都市交通に比べると、約10分の1で済むと言われている。BRTの構築に当たっては以下のような基準が ITPD(International Transportation Policy Development)やWRI(World Resources Institute)により推奨されている。

  • 他の一般車線とは区分されたBRT専用車線が設けられている。
  • 専用のBRT乗降ステーションを持ち、バス床と同じ高さでプラットフォームが作られている。
  • バス車内ではなく、乗車前に乗降ステーションにて運賃を徴収する仕組みがある。
  • 大量輸送可能な二両連結の大型バスを使用している。

4. おわりに

BRT分野は自動化技術や燃料電池の実現などによってさらなる成長・発展が期待され、それに応じてICT関連領域への需要拡大が期待される。
BRT を建設する為には専用道路や駅舎の整備、大型連結バス車両、料金収受/運行管理のICT設備等莫大な資金投入が必要である。新興国・途上国では、中南米の ケースのように官民連携プロジェクトとして、官が専用道路と駅舎等のインフラを整備し、バス車両の調達とICT設備の整備といったバスの運行に関する部分 は民間事業者が10~20年のコンセッションで受け持つ方式となる傾向が高い。

コンセッション形式については一部の商社を除き日本企業には馴染みが薄い。現地法手続きも煩雑で時間がかかり、また、長期間に亘るプロジェクトとなるため現地にしっかりと根付くことが不可欠である。

以上

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