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メダル獲得に湧くスキージャンプ競技への応援歌

主幹研究員 加藤 竹彦

 ソチオリンピックで日本のスキージャンプ陣が活躍している。男子選手がメダルを手にしたことは嬉しいし、メダルに届かなくても努力した選手たちを心からねぎらいたい。


 かつて札幌オリンピックで「日の丸飛行隊」がメダルを独占した時の感動や長野オリンピックでの団体戦の逆転劇が鮮やかに蘇ってくる。日本は昔からジャンプ王国だったのだ。


 日本選手は、数々のルール改正に泣かされてきた。まずスキー板の長さ制限である。当初は身長+80cm以下であったが、身長の146%以下となった(のちに145%)。これにより身長の高い人ほど、より長い板を使えることになる。また、スーツにも制限が加わり、日本人選手が使用していた、風の抵抗を受けやすい「短足スーツ」も使えなくなった。


 スキー板の長さ制限はさらに変わる。過度な減量を防止するために、BMIルールを採用した。BMI値(体重を身長の二乗で割る)が基準値よりも少ないと、板の長さが146%からさらに下がる。西洋人の体型に有利になる。こうして日本人選手は不利な条件での戦いを強いられてきた。それでも日本は飛型点の向上などに取り組み、世界に伍する実力を維持し続けた。


 2011年から新たに加わった採点方法もある。ウィンドファクターとゲートファクターである。ジャンプは風に大きく影響されるので、従来は運といわれた要素を少しでも補正する狙いがある。飛行中の風の状況および助走速度の正確な測定と、その素早い補正計算が可能になったから実現したものと推察する。ならばもっとITを活用して、日本人選手を応援できないだろうか。


 高梨選手がメダルに届かなかったのは、2回とも飛行中に厳しい風の変化があったからだといわれる。向かい風から追い風になる際の対応は一流選手でも難度が高い。


 ITにより、ウィンドファクターの精度を上げ、補正値をより公平にする。選手にミクロのセンサーをつけて予め風の変化を予測する。ゲートの位置が変わったことによる助走スピードの差をより正確に計算する、など。本番では無理でも練習で感覚を養えば安定度が増すのではないだろうか。


 ジャンプ競技は一瞬の勝負である。選手は体に受ける風を素早く判断し、反応しなければならない。瞬発力と数秒間の体型の維持、この刹那のために血みどろの努力と肉体改造に明け暮れる。凝縮の美が日本人のメンタリティに合うのだろう。頑張れ、ジャンパーたち。