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国民IDとAI時代のプライバシーに関する調査研究
2018年4月~2019年3月
【執筆・担当者】
原田 泉(国際社会経済研究所 上席研究員)
小泉 雄介(国際社会経済研究所 主幹研究員)
人工知能(AI)やビッグデータ分析については、ベネフィットとともに、プライバシー等の観点から個人にとっての様々なリスクが指摘されている。プライバシーにとって最も重要な原則の1つは「透明性」であるが、個人の属性・行動・傾向に対する推測(プロファイリング)や個人に対する意思決定が機械学習によるAIアルゴリズムに基づいてなされる場合は、その背後にあるロジックを人間の言葉で表現することは難しい。また「公平性」に係わる問題として、機械学習用データにどんなバイアスが含まれていたとしても、AIは自らそのバイアスを回避できないため、社会的差別が助長されることも懸念されている。またプロファイリングによって勝手な個人像が形成され、ネット社会等で一人歩きし、本人が不利益を受けてしまう問題も指摘されている。このような個人にとってのリスクを含め、AIの影響や倫理的課題については国内外の政府機関や民間団体等が指針作成等の活動を行っている。例えば、総務省の「AIネットワーク社会推進会議」では2018年7月に「AI利活用原則案」を公表し、G7やOECD等でソフトローとして国際的に共有されることを目指している。また、欧州委員会のAIハイレベル専門家グループは2018年12月にAI倫理ガイドライン案を公表している。産業界としては、AIとプライバシーに関する課題を洗い出し、その対応策について自ら検討を行うことが重要である。本調査研究では、AIとプライバシー保護等に関するこれらの国内外動向について文献調査と共に現地調査(英国、米国)を行い、産業界としての提言や、社内外に対する情報発信を行った。