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AIの活用がもたらす金融サービスの新しい潮流に関する調査研究
2018年4月~2019年3月
【執筆・担当者】
大平公一郎(国際社会経済研究所 主幹研究員)
本調査研究については、大きく2つのテーマについて調査を実施した。
ひとつめは、保険業界で進むデジタル化とインシュアテックの動向についてである。保険業界の主要な業務はすでにICTシステムの利用を前提としてなりたっている。しかし、契約や保険金の請求などまだまだ紙ベースの処理も多く残っており、デジタル化の余地が多く残されている。フィンテックと同様にモバイル(スマートフォン、タブレット)、IoT、ビッグデータ、人工知能・AI、といった新しいICTの活用も大きな注目を集めている。保険はもともと「大数の法則」が基礎にあるため、事業が成り立つためには最初から一定規模の契約が必要となる。また、いざという時に保険金が支払われるという約束をきちんと履行させる必要があり、監督機関の許認可の仕組みがかなり厳しいものとなっている。こうした事情から、独自に保険事業を手掛けるスタートアップ企業はあまり出てきていないのが現状である。インシュアテックについては、世界最大の再保険会社Lloydsを抱え、欧州保険市場の中心地であるロンドンでの現地調査も行った。
ふたつめは、ICTの分野でも世界をリードしている米国でのインシュアテックの動向についての調査を実施した。損害保険分野では、自動車保険におけるUBI(Usage based Insurance)が普及し、自動車保険の損害査定では、スマートフォンによる事故破損部分の写真撮影・送付とAIによる診断を組み合わせて、調査員による査定を代替するサービスも普及し始めている。映像による査定は自動車事故にとどまらず、住宅の破損や大規模な災害による被害などを、ドローンを利用して査定する仕組みが取り入れられている。また住宅では、スタートアップ企業が火災探知機、漏水探知機、監視カメラなど様々なセンサーを保険会社に提供し、センサー、監視/探知サービス、保険をバンドルさせて顧客に提供する流れが出てきていることも明らかになった。