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国民IDとデータ社会のプライバシーに関する調査研究
2019年4月~2020年3月
【執筆・担当者】
原田 泉(国際社会経済研究所 上席研究員)
小泉 雄介(国際社会経済研究所 主幹研究員)
(1)国内外におけるAI倫理とプライバシー問題
AIを用いたビッグデータ分析については、プライバシーその他の人権の観点から様々な問題が指摘されている。プロファイリングによる要配慮個人情報の推測、バイアスによる社会的差別の助長、アルゴリズムの透明性等である。これらの問題については、国内外の政府機関等がガイドライン類を発行しており、公平性・アカウンタビリティ・透明性といった一般原則は示されているが、実際に企業が行うべき具体的方策については示されていないため、更なる調査と検討が必要である。
(2)顔認識技術の利用サービスおよび規制動向
GAFAなどの巨大プラットフォーマー企業に対抗する手段として、国内ではPDSや情報銀行など、個人データの可搬性を高めたり、複数企業で融通するサービスに向けた取組みが開始されている。これらのサービスで共通課題として挙げられるのが、運営企業のマネタイズ、利用者へのインセンティブ、利用者を特定するIDの3つである。ネット上でのサービスであれば文字列IDやメールアドレスを使えるが、実世界でのサービスにおいては、利用者を特定するIDとして従来はカードやスマートフォン等の提示が必要であった。このような実世界での個人認証を顔認識等のバイオメトリクスで置き換えることは空港・店舗等の一部で進められているが、その利用範囲を拡げることについて、プライバシー等の観点から十分な社会的コンセンサスは得られていない。顔認識等を活用したサービスについて国内外動向を調査し、社会的コンセンサスを得るための方策について検討を行う必要がある。
本調査研究では、上記の2テーマについて文献調査と共に現地調査(英国、フランス)を行い、社内外に対する情報発信や提言を行った。