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ヘルスケア分野のICT活用が可能にするQOL・QOD向上に関する調査研究
2019年4月~2020年3月
【執筆・担当者】
山田 肇(アクセシビリティ研究会 主査/東洋大学名誉教授)
川添 高志(ケアプロ株式会社 代表取締役社長)
榊原 直樹(清泉女学院大学人間学部文化学科 専任講師)
下野 僚子 (東京大学総長室総括プロジェクト機構「プラチナ社会」総括寄付講座 特任助教)
関根 千佳(株式会社ユーディット会長/同志社大学政策学部大学院総合政策科学研究科客員教授)
平尾 勇(株式会社地域経営プラチナ研究所 代表取締役/前 松本ヘルス・ラボ副理事長)
藤方 景子(認定NPO法人湘南ふじさわシニアネット)
矢冨 直美(東京大学高齢社会総合研究機構 協力研究員/一般社団法人セカンドライフファクトリ代表理事)
遊間 和子(国際社会経済研究所 主幹研究員)
ヘルスケア分野での最先端技術の活用は、パーソナライズされたケアの提供、健康無関心層への働きかけや高齢者の社会参加など様々な効果が期待されるが、その適用にはまだ多くの壁がある。このような取り組みを確実に進めていくためには、持続可能な社会保障制度というマクロ的な側面だけでなく、市民・患者側の視点も重要であり、いかに「QOL(Quality of Life)」を向上させ、生き生きと活躍できる社会につなげていくか、さらには、人生の終末期において自身の希望がきちんと反映されるような「QOD(Quality of Death)」までも含めて考えていくべきである。
本調査研究では研究会方式にて調査研究を行い、関係省庁における政策動向に加え、健康・医療・介護分野でのAI・ビッグデータ活用についての先進事例調査を実施した。国内においては、金沢大学における生活習慣病に対するオンライン保健指導サービスの構築と行動変容への検証研究、金沢工科大学のスマートシューズ、金沢市医師会のハートネットホスピタルによる地域連携とACP共有、Share金沢における「ごちゃまぜ」による多世代複合コミュニティの構築、金沢市のAI等を活用した地域振興といった先進事例を紹介している。海外においては、情報化と福祉国家を両立しているデンマークを現地調査し、デジタル委任状、Qlife社の血液1滴の家庭用検査ツール「EGOO」、Symmetric社の在宅ケア早期発見ツール「TO+」、ヴィボーViborg市におけるアニメーションによるヘルスリテラシー向上といった取り組みを報告している。
これらの調査結果から、地域医療連携システム間でのHIEおよびPHRによるセルフケアデータの連携により個別化、在宅、予兆検知を加速化していくことの必要性や、患者・市民側だけでなくケア提供側の行動変容の促進、ICTによるナッジとEBPMにつなぐ仕組みの既存システムへの取り込みの重要性など、高齢化が進む日本におけるQOL・QOD向上につながるICT活用のあり方について提言としてまとめた。