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社会のデジタル化を促進する新しい金融サービスに関する調査レポート

2020年4月~2021年3月

【執筆・担当者】
大平公一郎(国際社会経済研究所 主幹研究員)


   本調査研究では、中間報告としてブロックチェーン上で生成されるトークンを軸として成立するトークンエコノミー、最終報告として東南アジア諸国のフィンテック事情についての調査報告を行った。その主な内容は以下のとおりである。

 

(1)トークンエコノミー
  何らかの権利や財産的価値をデジタルで表象したトークンを発行・流通させ、決済や送金の便利向上、新しい財・サービスの普及、企業の資金調達手段の増加、といった便益を得ようとする活動が進んでいる。現在のトークンはブロックチェーン上で生成され、トークンの発行・流通といった一連の流れはデジタルネットワーク上で完結する。トークンは、性質・用途によって、ペイメントトークン(仮想通貨)、ユーティリティトークン、セキュリティトークンに分類される。トークンを軸として成立する経済圏は、トークンエコノミーと呼ばれる。

 ペイメントトークンでは、法定通貨と連動するステーブルコインの利用、また中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)に発行にも注目が集まっている。セキュリティトークンでは、すでに株式・債券・不動産など幅広い資産を対象としたトークンの発行が進んでいる。日本国内でも業界団体の立ち上げなど、利用を促進する動きが出ている。

 

(2)東南アジア・ASEAN諸国のフィンテック事情
 東南アジアの主要国は、言語や宗教などは異なるが経済的には結びつきが強く、人口で世界の9%を占める重要な地域である。成人人口の多くが銀行口座を持たないもしくは十分に利用できない状態にある一方、携帯電話は広く普及し、スマートフォンのアプリを入り口とした金融サービスの提供が受け入れられている。COVID-19の拡大は、イーコマースやオンラインメディアなど様々なデジタルサービスの利用につながり、その対価の支払いを通じて、フィンテックサービスの利用が促進された。

   フィンテックサービスの提供者は、銀行など既存金融機関に加えて、専業のスタートアップ企業やライドシェアなど他のデジタルサービスを提供している企業などさまざまである。特にシンガポール、インドネシア、マレーシアは企業数が多く、フィンテックのハブとなっており、各国をまたいで企業活動をする企業も存在している。

   代表的なスーパーアプリとして、シンガポールのGrab、インドネシアのGojekなどがあるが、東南アジア全体を見たときに、圧倒的なシェアを持つわけではなく、各国で独自の企業が成長する余地はかなり大きいとみられる。