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先進国中央・地域政府における行政のDXに関する調査研究

2020年4月~2021年3月

【執筆・担当者】
飾森 正(国際社会経済研究所 主任研究員)

 日本の行政のデジタル化の遅れは以前から指摘されていたが、新型コロナウイルス感染症拡大とその政策対応において、特別定額給付金の申請手続きの混乱・遅延等にみられるように、行政サービスにおけるデジタル化の実態が、あらためて具体的かつ象徴的に露わになった。

   20209月に発足した菅内閣の政策の柱としたのは、新型コロナウイルス感染症対策に加え、行政のデジタル化の推進、その推進役としてのデジタル庁創設であった。新型コロナウイルス感染症が収束しない中、202010月から12月という短期間で、新型コロナウイルス感染症対策及び感染症収束後の新常態を見据えた検討を短期間で終え、20201225日に「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が閣議決定され、202129日にこれまでの「IT基本法」を廃止し新たに制定する「デジタル社会形成基本法案」、20219月のデジタル庁設置のための「デジタル庁設置法案」等、いわゆる「デジタル改革関連法案」が閣議決定された。

   また、新型コロナウイルス感染症拡大による混乱は、住民へ直接行政サービスを提供する現場に近い地方自治体でより大きな課題になっている。一部の自治体では、民間のデータ等を活用・連携した独自の緊急的な対応を行っているが、新型コロナウイルス感染症対策及び感染症収束後の新常態を見据え、既存のデジタル計画の改定や新たなデジタル計画を策定する必要性が高まっている。

   例えば、三重県では、新型コロナウイルス感染症発生前から検討していたデジタル計画を見直して、20206月に新たな「みえデジタル戦略推進計画」を策定している。また、愛媛県では、20207月に愛媛県ICT推進会議を立ち上げ、当年度で都道府県初となるデジタル変革を前提とした総合戦略の策定に着手し、新たな「愛媛県デジタル総合戦略」を策定している。更に、山形県酒田市では、大手IT企業のトップがCDOに就任し、かつ、大手通信企業と大学を含めた産官学連携で行政のデジタル化を推進する全国でも珍しい体制を構築し、20213月に「酒田市デジタル変革戦略」を策定した。

   皮肉にも、新型コロナウイルス感染症が行政のデジタル化の議論を一気に高めることになったが、今後も行政サービスを都度見直し、不断に変革を進めていくことが必要となっている。