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ホワイトボックス型AI を活用したケアプランの社会実装に係る調査研究

令和3年度 厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)

2021年6月~2022年3月

   ケアプランの作成は、ケアマネジメントの中でも負担感の高い業務であり、ケアマネジャーによるバラつきも指摘され、AIを活用することへの期待が高い。老健事業では、平成29年度からの3年間をフェーズ1と位置づけ、ケアプラン作成支援AIの開発には、量と質の両面からのアプローチが重要であることを明らかにしてきた。本調査研究は、令和2年度からの3年間をフェーズ2と位置づけ、居宅介護支援事業者やホワイトボックス型AIにおいて先端的技術を持つNEC等と協働し、5つの実証に取り組んだ。

   ケアマネジャーの思考フローの見える化への取り組みでは、昨年度の心疾患に続き、脳血管疾患の複線的モデルを作成した。本調査研究で利用しているAIエンジンでは、多種多様なデータの中から精度の高い規則性を自動で発見してグループ分けを行い、その規則に基づいて、状況に応じた最適な予測を行うことができるが、専門的な分野の分析においては、その分野の知識・知見による調整も必要となる。複線的モデルによって得られた項目をルールという形でAIに学習させることで、専門性の高いケアマネジャーの判断に近い基準で新しいグループ分けをすることが可能となった。

   また、加齢による心身の低下を「調整変数」という形で反映することにも取り組んだ。高齢者の場合、疾患の影響や加齢によって、心身の状態が下降していくことは必然である。傾向スコアという手法を使い、類似の利用者グループを抽出し、そのグループの平均と比較することで「悪化を抑制できた」ことを判定できるようになり、利用者の状態変化をより正確にAI分析に反映し、AIのアルゴリズムの精度向上に貢献した。

   フェーズで2では、蓄積されたデータだけでなく、優秀なケアマネジャーの知見や関係する専門職の知見を活かすことでより実態に近い分析を進め、AIのアルゴリズムの精度向上を目指してきた。フェーズ 2の最終年度となる来年度は、類型化した8クラスタにおいてAIモデルの構築を進め、アルゴリズムの精度向上を行っていく。また、構築したAIモデルをケアプラン作成支援AIとして社会実装するイメージをより具体化するため、ホワイトボックス型AIの特徴である「根拠」の示し方や、ケアプランの作成時の「気づき」の促し、ケアマネジャーがAIの導きだした結果をどのように活用することができるのかといった検証を進めていく予定である。さらに、老健事業を実施する中で蓄積されてきた知見を整理し、広く社会に共有していくことも検討している。