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産業および環境に関わるデータ連携基盤の国内外政策動向に関する調査研究

2024年4月~2025年3月

【執筆・担当者】
松永 統行(国際社会経済研究所 主任研究員)

   202411月、北はロシア、南はイランと国境を接し、国土の半分が山地であるアゼルバイジャン共和国の首都バクーで開催された国際気候変動会議COP29では、先進国が2035年までに約47兆円を拠出する途上国支援の資金目標の合意には至ったが、脱化石燃料への目標の強化については、従来の合意事項を確認するに留まった。COP29は、米国のトランプ政権がパリ協定の脱退を示唆する中での開催となり、日本の存在感も問われるCOPとなった。再生可能エネルギーへのシフトなどの気候変動対策は、近未来の産業競争力に結び付く。高度な情報技術を駆使したエネルギー網や物流網などの次世代社会インフラの構築は、政策課題としても急務である状況は変わらない。

 欧州は、2050年の脱炭素社会を目指し、次世代産業インフラを支えるクラウド/データ連携基盤となるGaia-Xプロジェクトを展開している。Gaia-Xとは、データ連携を推進することにより、企業や利用者の情報共有を進め、高度なトレーサビリティが実現することを目的とし、データエコシステムとインフラエコシステム、そしてこの二つをつなぐフェデレーションサービスの3つのレイヤーから構築されているイノベーションエコシステム政策でもある。これに、多様な産業界が呼応し、自動車業界のデータ連携基盤であるCatena-Xや製造業のデータエコシステムを目指すManufacturing-Xなどがすでに本格稼働を始めている。Gaia-Xは、クラウドインターネットを寡占している北米のプラットフォーマーであるGAFAMから独立するために政策的に構築している産業基盤であるが、クラウドコンピューティングそのものも根本的に変わろうとしている。また、欧州では、2021年にIndustry5.0を発表し、2023年には新しいデジタル戦略として世界を創発すべくWeb4.0戦略を打ち出している。

 本調査研究では、脱炭素社会に向けて構築される次世代産業インフラを支えるデータ連携基盤の動向や、世界経済フォーラムや国際排出権取引協会(IETA)の政策を調査し、データ連携基盤の進化による社会概念や技術革新や経済システムの変容について考察し、脱炭素社会に向けた社会革新や技術革新についてとりまとめた。