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データ連携をめぐる社会課題と政策動向に関する調査研究

2025年6月~2026年3月

【執筆・担当者】
小泉 雄介(国際社会経済研究所 主幹研究員)(上期担当)
岡部 稔哉(国際社会経済研究所 主任研究員)(下期担当)

 社会・経済活動のあらゆる場面で生成・蓄積されるデータは、単なる業務効率化の手段を超え、イノベーション創出、産業競争力強化、さらには社会課題解決や政策立案の高度化を支える基盤として位置付けられるようになっている。とりわけ近年は、生成AIをはじめとする高度なデータ利活用技術の普及により、高品質かつ多様なデータへのアクセスが、国や企業の競争力を左右する重要な要素となっている。

 一方で、データの利活用が進むにつれ、個人情報やプライバシーの保護、企業秘密や知的財産の扱い、サイバーセキュリティの確保、さらには国境を越えるデータ流通に伴う主権や安全保障上の課題が顕在化している。また、複数の企業・組織が関与するデータ連携においては、データ提供に伴うコストやリスクに見合う見返りが不明確であることから、データが十分に共有されず、価値創出に結び付かないケースも少なくない。こうした課題に対処するためには、単なる技術基盤の整備にとどまらず、法制度、ガバナンス、経済的インセンティブを含む包括的な政策設計が不可欠である。

 このような認識の下、欧州、米国、中国、日本をはじめとする主要国・地域では、データを戦略的資源と位置づけ、データの利活用と信頼の確保の両立を目指した政策展開が進められている。特に欧州では、AIIoT時代のデータ駆動型経済を支える新たなデジタルインフラの構築を志向するデータスペース構想の社会実装が進んだ。202511月に発行された欧州データユニオン戦略では、AI時代を見据えて乱立する制度を再構成するとともに、医療、金融、モビリティ、製造業などのセクター別データスペースのスケールアップ、そしてセクターをまたがる共通欧州データスペースの構築フェーズへの移行を進めている(いわゆるSeason 2)。一方、米国では市場メカニズムと分野別規制を軸としたアプローチ、中国では国家主導によるデータ市場の整備、日本では、欧州の動向を強く意識しながらも分野別の実証や制度整備など段階的なデータ連携の推進が進められており、各国・地域ごとに異なる政策アプローチが展開されている。

 本調査研究は、これら主要国・地域におけるデータ連携を巡る政策動向を整理・比較するとともに、データ連携を阻む要因や、データ提供を促進するためのインセンティブに関する検討動向について分析する。これらの検討を踏まえて、日本における今後のデータ利活用や産業競争力強化に向けた示唆を提示する。