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産業・技術から見た経済安全保障上のリスクと機会に関する調査研究

2025年6月~2026年3月

【執筆・担当者】
本田 義明(国際社会経済研究所 研究員)

   日本の経済安全保障政策は、国際情勢の変化や経済安全保障推進法の改正などの転換期を迎えている。一方で、日本政府がこれまで推し進めてきた戦略的自律性や戦略的不可欠性という視点だけでは、現在直面する課題に対して精緻な対応ができなかったり、既存の政策に綻びが見られたりする事例も見受けられる。

 そこで中間報告では、自動車産業を事例に、経済安全保障として対象とするべき範囲や着目するべき視点について分析した。その結果、中国において自動車の電動化・知能化の技術革新が急速に進み、国際市場で存在感を増している中、各国は蓄電池や半導体などの重要物資の確保にとどまらず、国内の自動車産業の防衛や国際競争力の維持を重要な目標と設定し、政策資源を投入していることを明らかにした。これらの点を踏まえ、経済安全保障政策を検討するうえで、戦略的自律性・戦略的不可欠性といった視点だけで捉えるのではなく、産業の国際競争力や国内の雇用の維持・創出といった、多角的な国益の視点を統合して検討する必要性を指摘した。

 最終報告では、中国に優位性がある産業領域における我が国や日本企業の経済安全保障政策の在り方について検討した。中国は「中国製造2025」の節目の年を迎え、次世代自動車やヒューマノイドロボットなどで技術力を示している一方、Nexperia製の半導体の輸出禁止措置など、経済の武器化の手法を洗練させている。これに対して各国の政府や企業は依存度の高い物資では多角化を進める一方、米国の第二次トランプ政権との摩擦を背景に、また中国の技術やイノベーション・エコシステムにアクセスするために、中国の関係の再構築を進めている。以上の状況を踏まえ、本報告書では、経済安全保障の確保と自国・自社の国際競争力確保にトレードオフの関係があることを明らかにした。また、日本企業にとって中国におけるイノベーションや技術動向を把握し、競争環境を理解することが長期的な経済安全保障の確保と国際競争力の観点から重要であることを指摘した。