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IISEシンポジウム「健康長寿のまちづくりとICTの役割-健康・医療・介護のさらなる連携-」

2015年3月11日

IISEシンポジウム「健康長寿のまちづくりとICTの役割-健康・医療・介護のさらなる連携-」が3月11日に開催され、会場となった日経カンファレンス&セミナールーム(大手町)には100名近い参加者にお集まりいただき、盛況のうちに終了いたしました。

ご挨拶する岡田理事長
ご挨拶する岡田理事長
厚生労働省 吉田課長補佐
厚生労働省 吉田課長補佐

弊社理事長の岡田からの挨拶に続き、基調講演には、厚生労働省老健局振興課課長補佐の吉田昌司氏にご登壇いただき、「我が国における地域包括ケアシステムの実現に向けて」(吉田氏のプレゼン資料はこちらをクリックください) と題し、社会保障改革により本格的にスタートした地域包括ケアの全体像についてお話をしていただきました。地域包括ケアでは、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制を構築するため、ますます地域の力が必要とになっています。市町村が中心となり、アクティブシニアを含めた多様な主体が担い手となって取り組みに関わっていくことが重要であり、その連携にはICTが大きな役割を果たすこともご指摘いただきました。

ケアプロ 川添社長
ケアプロ 川添社長
国際社会経済研究所 遊間
国際社会経済研究所 遊間

先進事例報告といたしましては、ケアプロ株式会社代表取締役社長の川添高志氏より「健診弱者を救う!セルフ健康チェック」(川添氏のプレゼン資料はこちらをクリックください) と題し、民間の立場からの健康へのお取り組みをご紹介いただきました。1年以上健診を受けていない「健診弱者」は3,376万人もいると言われており、ケアプロが提供する「セルフ健康チェック」が健康への気づきをもたらし、生活習慣病の予防や医療費削減にもつながっていくという社会貢献型のビジネスモデルとなっています。現在は、日本国内だけでなく、世界へとビジネスの場を広げていらっしゃるということで、輸出産業としてのヘルスケアにも期待が高まるお話しでございました。

弊社主任研究員の遊間和子からは「スペイン・アンダルシア州におけるeHealthの推進」(遊間のプレゼン資料はこちらをクリックください)と題して、地域EHR・ヘルスケアIDをベースとして、市民視点で提供されているeHealthサービスについて報告させていただきました。アンダルシア州では、電話またはインターネット経由のヘルスケア関連のワンストップサービスや、欧州最大の遠隔介護(テレケア)を公的サービスで提供するなど、eHealthの先進地域となっています。特に、医療・介護・社会福祉を同じ省庁が管轄することで、市民からの満足度も高い統合的なサービスを実現できていることは、日本の地域包括ケアにも非常に参考になるとの指摘がなされました。

左から東洋大学経済学部 山田教授、ケアプロ 川添社長、 株式会社ユーディット 榊原取締役研究員、日野市 中平地域戦略室副主幹、NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹 堀池顧問、一般社団法人セカンドライフファクトリー 矢冨代表理事
左から東洋大学経済学部 山田教授、ケアプロ 川添社長、 株式会社ユーディット 榊原取締役研究員、日野市 中平地域戦略室副主幹、NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹 堀池顧問、一般社団法人セカンドライフファクトリー 矢冨代表理事
日野市 中平地域戦略室副主幹
日野市 中平地域戦略室副主幹

パネルディスカッションでは、東洋大学経済学部の山田肇教授にコーディネーターをお願いし、川添社長、榊原直樹 株式会社ユーディット取締役主任研究員、中平健二朗 日野市地域戦略室副主幹、堀池喜一郎 NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹顧問、矢冨 直美 一般社団法人セカンドライフファクトリー代表理事にご登壇いただき、健康長寿のまちづくりとICTの役割についてご議論いただきました。

まず、日野市地域戦略室の中平健二朗副主幹より、「日野市のヘルスケアウェルネスの取組み」(中平氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)についてご紹介いただきました。日野市では、少子高齢化への危機感から2年前に地域戦略室を創設し、3つの戦略、①人口バランス・定住化促進戦略、②産業立地強化・雇用確保戦略、③ヘルスケアウェルネス戦略を柱に立て、相互作用、相互連携で地域づくりを進めています。ヘルスケアウェルネス戦略では、イオン株式会社やGEヘルスケアジャパンなどの産業界との連携、実践女子大学や明星大学などのアカデミックとの連携により、産官学でこの課題に取り組まれています。「行政はお金が無いが、人、現場、組織をつなぐHUBでありたい」というお言葉が非常に印象的な発表でした。

その後、榊原氏からは、データヘルス計画によりヘルスケア分野のデータ活用が促進されつつある状況についてご説明いただき、川添氏からは、「ケアプロのような民間企業が病気の方々を健康にした場合、顧客が減ることにつながる。医療費削減という社会的課題解決に寄与したことに対するインセンティブの仕組みがあれば」との指摘がなされました。
地域における高齢者の戦力化につながる活用の視点からは、堀池氏より、三鷹市で活動するNPO法人グレースケア機構の介護保険制度の枠にとらわれない上質なケアを提供する活動や福岡県の70歳現役応援センターなど、「生涯現役」につながる活動を紹介いただきました。東京大学高齢社会総合研究機構客員研究員の肩書きも持つ矢冨氏からは、各自治体が実施している介護予防対象者把握事業のデータ分析から、地域資源と健康は密接に関係しているということを見える化する「地区診断タペストリー」をご紹介いただき、先進的な取り組みで有名な柏市におけるシニア就労がさらに一段進み、一般社団法人セカンドライフファクトリーという組織がスタートしたとのご報告がありました。
会場との質疑応答後、山田氏より、データ活用を予防につなげる仕組み、官民の協力、シニアの社会参加による健康維持の重要性について指摘がされ、パネルディスカッションを終了いたしました。

久住見附市長
久住見附市長
会場の聴衆
会場の聴衆

パネルディスカッション後には、変則的なプログラムとなりましたが、地方議会開催というご多忙の中駆け付けてくださいました見附市長の久住時男氏より、特別講演「スマートウエルネスみつけの実現」(久住氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)と題し、「健幸」をキーワードとして、いち早く自治体主導のヘルスケア施策に取り組まれてきたご経験をお話しいただきました。狭義のヘルスケア施策を大きなまちづくりへと発展させ、コミュニティバス・デマンドタクシーといった公共交通政策や市外からの観光誘致、地域コミュニティの形成などへとつながっていくお話しは、大変示唆に富んだものとなりました。また、施策から得られるデータを蓄積・分析することで多くのエビデンスを導きだし、PDCAに活かされており、ICTの可能性とその重要性を改めて感じることができました。

最後に、アクセシビリティ研究会の主査でもある東洋大学経済学部の山田肇教授より、研究会の調査研究活動からの提言「高齢化の進展と健康・医療・介護のさらなる連携への10の提言」(配布資料はこちらをクリックください)のエッセンスをご報告いただき(山田氏のプレゼン資料はこちらをクリックください)、シンポジウムのまとめとさせていただきました。

スピーカーとプログラム

13:30 ご挨拶 岡田秀一 株式会社国際社会経済研究所理事長
13:35 基調講演
「我が国における地域包括ケアシステムの実現に向けて」
吉田昌司 厚生労働省老健局振興課課長補佐
13:55 先進事例報告
「健診弱者を救う!セルフ健康チェック」
川添高志 ケアプロ株式会社代表取締役社長
14:25 海外事例報告
「スペイン・アンダルシア州におけるeHealthの推進」
遊間和子 株式会社国際社会経済研究所
主任研究員
14:45 休憩 15分  
15:00 パネルディスカッション
「健康長寿のまちづくりとICTの役割」
コーディネーター:
山田 肇 東洋大学経済学部教授
パネリスト(五十音順):
川添高志 ケアプロ株式会社代表取締役社長
榊原直樹 株式会社ユーディット取締役 主任研究員
中平健二朗 日野市地域戦略室副主幹
堀地喜一郎 NPO法人シニアSOHO普及サロン・三鷹顧問
矢冨直美 一般社団法人セカンドライフファクトリー代表理事
16:00 特別講演
「スマートウエルネスみつけの実現」
久住時男 見附市長
16:40 「まとめと提言」 山田 肇 東洋大学経済学部教授/
アクセシビリティ研究会主査
16:50 閉会