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AI社会が個人にもたらす「価値」とそのトレードオフ:日米欧の分析をもとに
『日本セキュリティ・マネジメント学会誌 Vol.33, No.2』(2019年9月号)に、弊社小泉雄介(主幹研究員)と早田吉伸氏(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科非常勤講師(現県立広島大学大学院経営管理研究科准教授))の研究ノート「AI社会が個人にもたらす「価値」とそのトレードオフ:日米欧の分析をもとに」が掲載されました。
「個人データは21世紀の新たな石油である」と言われ、AI社会では個人データの利活用による様々なサービスの提供や社会的課題の解決が期待されています。国内外のガイドライン類では、個人データの流通や利活用が社会・企業・個人にもたらす「価値」について様々な言及がなされていますが、それが誰に対する価値なのかを峻別した整理が必ずしもなされていません。本稿ではAI社会において尊重すべき「価値」のうち、個人データの利活用が「個人に対して」もたらす価値について、ガイドライン類から抽出した結果、「自由」「平等」「安全」「利便」の4カテゴリに分類できることを明らかにしました。個人がデータ利活用と通じてこれらの価値を追求すると、個人にとってベネフィットがあるのみならず、リスクも発生するというトレードオフの関係が見られます。例えば、監視カメラを設置して不審者の画像を取得することは「安全」に役立ち、社会的にも受容されています。しかし、更なる安全を目指して監視カメラ設置台数を増やしたり公道で顔照合を行うことは、個人の「自由」に対して重大な萎縮効果をもたらします。これらベネフィットとリスクの間のバランスをどのように取るかは、国や社会の在り方によって変わりえます。AI社会において、個人にとっての諸価値間のバランスをどのように取るべきか、また個人にとっての価値と社会や企業にとっての価値との間のバランスをどのように取るべきかは、今後の重要な検討課題です。