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IISEシンポジウム「AI/IoTによる新しい社会の実現 ~都市機構におけるポリモルフィックネットワーキングの萌芽~」開催報告

2018214日、国際社会経済研究は、国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)のご協力もいただきながら、IoTシンポジウム「AI/IoTによる新しい社会の実現~都市機構におけるポリモルフィックネットワーキングの萌芽~」を開催いたしました。

  • 日時:2018214日(水)13:301700
  • 会場:内幸町ホール
  • 主催:()国際社会経済研究所
  • 協力:国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM

 

本シンポジウムは、東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授を主査にお迎えしながら議論を続けておりますIoT研究会(2015年~)を基盤としており、今回は第3回目となります。会場の内幸町ホールには、約90名のご有識者のご参集をいただき、4つの講演の後のパネルディスカッションでは、会場からも活発なご議論をいただくことができました。



冒頭、弊所社長の民長による開催挨拶に続き、

国際社会経済研究所 社長 民長による開会挨拶

東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕氏より基調講演「IoTによるモビリティ・ロジスティクス全体最適」をいただきました。

東京大学先端化科学研究センター教授の西成氏よる基調講演の様子

IoTAI 活用によるスマートシティ社会をどのように捉えればよいのか、あるべき姿についてのお話しいただきながら、IoTの特徴の本質である“ポリモルフィックネットワーキング”に着眼することによる、IoTの強みを活かした設計についてのご講演をいただきました。IoTの活用法として、①シェアリング、②マッチング、そして新しく、③アジャスティングという3つの形態をご提示いただき、とりわけ、少数のリソースを多で利用する場合に動的な割り当て調整によりコンフリクトの解消を可能にする“アジャスティング”については、社会の多様で有限な資源の希少性を解消する葛藤を解決するものであり、この葛藤こそが、“ポリモルフィックネットワーキング”のエネルギー源になるというご洞察もいただきました。また、世界のモビリティ最適化の状況をご紹介いただきながら、日本がモビリティ後進国にならないためには、オープンデータの構築が急務であることや、合意形成や異分野融合の仕組み構築、日本に受容性の高い形での社会制度整備、IoTAIの価値を実現できる発想力・技術力を持った人材の育成の重要性についても言及いただきました。

西成氏のプレゼン資料はこちらをクリックください



次に、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの中西崇文准教授に「人工知能が育む共創ネットワーク社会」についてのご講演をいただきました。

東京大学先端化科学研究センター教授の西成氏よる基調講演の様子

従来のデータサイエンスは、仮説を立て、データの母集団を推定し、その仮説に基づいてデータをサンプリングすることで分析をしておりましたが、コンピューターの高機能化により、ビックデータの時代となり、データの母集団そのものを現実の写像としてそのまま取り扱えるようになったことで、データからモデルを作りだすデータ中心の科学が生まれた経緯についてのご説明いただきました。データを現実の世界の写像ととらえ、AIが学習をしながらその中にある理論やモデルを推定し、未来の推論を行う、従来とは逆の帰納的なプロセスが、実世界と仮想世界を循環する仕組みを生み出しており、IoTやビックデータやAIといったキーワードの中で新しいシステムが生まれている。そして、その次には、実世界を捉え局所最適解を導き出す多くのAIが、連系し合議し、あるいはメタAIの上で連鎖した、“ポリモルフィックネットワーキング”が生まれてくるという一連の構造をご紹介いただきました。

中西氏のプレゼン資料はこちらをクリックください



続いて、国際社会経済研究所の飾森正主幹研究員から、「AIを活用した都市交通 コロンバスのスマートシティ実証実験にみるポリモルフィックの萌芽」についての報告がありました。

飾森

米運輸省主催のスマートシティコンテストで優勝したコロンバスのスマートシティプロジェクトの最新情報をご紹介するとともに、クラウド上のIoTデータ基盤と、エッジ(自動運転、スマート信号器など)との連携、最適化、相互調整のメカニズムが検討され実証が進んでおり、自律化したシステム同士が多形的につながりあって全体として協調する“ポリモルフィック”の萌芽の事例が芽生えている状況が報告されました。

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最後の講演では、「都市機構のポリモルフィック化」について国際社会経済研究所の松永統行主任研究員からプレゼンテーションがありました。

松永

産業革命により大きく変化した3つの都市機構、エネルギー、ロジスティクス、コミュニケーションを横軸に、中央集権型から、インターネットのようなネットワーク構造でもある分散型へ、さらには、柔軟に形を変える多形型へと重なるように推移してきた、情報空間や都市機構のこの3つの構造的推移を縦軸に、欧州の5都市(レイキャビック、ミラノ、ストックホルム、ケルン、バルセロナ)の機構の特徴を俯瞰した説明がありました。産業革命から、インターネットによる情報革命へ、そしてSNSへ、さらにIoTやAIが顕在化して、多様な議論が始まっています。人のように、知覚するIoT、そして考え学習するAI、それらによってつくられる情報空間は、パーソナリティ(個性)を持ち、このパーソナリティが共鳴するように連系することで、新しい“ポリモルフィックネットワーキング”が生まれてくるという、社会革新の新しい形や構想を提言しています。また、現在、SNSの中に、多くのニーズやシーズが一つの場に集まる“Many on One”とも表現できる新しい場が生まれている現象が紹介されました。情報空間のさらなる進化により、多くの知能が一つの場に集まり、市場については顧客主導、社会システムについては市民主導、プラットフォーム開発については開発者主導という、(従来の中央集権型システムからみると)エッジ(現場)に知能化が進んでおり、知能化したエッジが共鳴的に協調するMany on One の仕組みを社会が持つ可能性も予見しています。

松永のプレゼン資料はこちらをクリックください



上記の4つの講演の後に、国際社会経済研究所の原田泉主幹研究員の司会進行のもと、「ポリモルフィックネットワーキングの実現への道」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッション

西成氏のご講演からは、AIネゴシエーション、中西氏からは、AI合議とAIネットワーキング、松永からはAIの共鳴機構というキーワードが抽出され、多彩な議論が展開し、会場からも活発なご意見をいただき閉会いたしました。

以上